2015年9月11日金曜日

DAP紹介(1) NW-ZX1

DAP(Digital Audio Player)の紹介です。
イヤホンと同じくピンキリですが主にハイエンドと呼ばれる物を紹介していきたいと思います。
まずトップバッターはSonyのNW-ZX1。



NW-ZX1 スペック
OS:Android 4.1
CPU:Ti OMAP4 Dual-Core 1GHz
RAM:1GB
ストレージ:128GB(SDなどで拡張不可)
電池容量:非公開(おそらく1000mAh前後)
外形寸法:59.7×122.3×13.5mm(最薄部:9.8mm)
重量:139g
操作:4.0型タッチパネル+側面ハードキー(六個)
再生動作時間:32時間(ほんまかいな)
DAC:アンプと一体型のS-Master HX
ヘッドホン出力:シングルエンド, 15mW+15mW
ライン出力:あり(Dockコネクタ)
デジタル出力: USB-AUDIO接続(Dockコネクタ) ※難あり
Bluetooth:あり(A2DP)
再生フォーマット:DSD,mp3,wma,ATRAC,wav,AAC,FLAC,Apple lossless,aiff
(サンプリング周波数:192k/24bitまで対応。DSDはPCM変換再生)
エフェクタ:イコライザ5バンド、 DSEE HX

ルックス
いわゆるハイレゾウォークマンです。
非常にコンパクトで持ちやすく、ハイレゾ再生機としてはかなり小型だと思います。
背面の膨らんでいる部分は電源にOS-CONを使っているためです。この膨らみがちょうど指を掛けやすくデザインにも使い勝手にも貢献しています。机上に置くと少し斜めになっちゃうのが欠点ですがw
筐体はアルミ製で余計な装飾がなくスッキリしています。
ヘッドホンジャックに大きな真鍮部品が付いていますがデザイン?音的に有利には見えません。

ハードウェア
スペックはAndroidスマートフォンとほぼ同じ。スペック的には少し前のスマートフォンと同等です。
再生プレイヤーとして考えれば十分でしょう。ハイスペックなCPUは動作クロックも高く消費電力も高いため、ノイズ源になりやすいのでこの選択は悪くないと思います。
Sonyは電源を重視しているらしく、バッテリーの配線径とかOS-CONの採用で通常のウォークマンモデルに比べ豪華なハードウェアを備えています。オーディオ回路の基本は電源にあり、です。
ハイエンドプレイヤーで音質の指標にされるD/Aコンバータ(DAC)ですが、ZX1はSonyお得意のS-Masterを搭載しています。S-Masterの詳細は省きますが、ここが他社にはマネできない大きなポイントでしょう。
S-Master=デジタルアンプでハイエンド機でデジタルアンプ積んでいるDAPは今のところWalkmanだけです。
このお陰で高音質+長時間電池駆動が実現出来ています。
実際連続再生時間は他社に比べWalkmanはダントツに長いです。
WM-port経由でUSB-AUDIOが使えますが専用のケーブル(WMC-NWH10)が必要です。これが結構大きくて邪魔な上に使えるUSB-AUDIO(USB-DAC)はかなり限定されています(むしろ動くDACの方が少ない)
バスパワーで動くものはだめでusb audio class-2の物もあまり認識してくれません。この部分だけはイマイチです。もう少し互換性を考慮してほしかった所です。

ソフトウェア
ハイエンドプレイヤーですが、Android自体はあまりがっつりカスタマイズされていません。
されてないどころか、xperiaと同じ様なソフトウェアまでプリインストールされていてちょっと困惑します(これでReader使う人いるの・・・?)
また内部パーティションの構成が悪くシステム領域が1GBしか割り当ててないせいで、標準アプリのまま使用していてもストアからアップデートし続けるとシステム領域が不足してアップデート出来なくなります。このため不要アプリを使わない設定にする必要があります(幸い機能の無効化はroot化しなくても出来ます)
また標準構成のまま使うと妙に電池消費が多く、再生してない時でも電池が減りまくります。いろんなアプリが通信しようとしてスリープ阻害するのが原因のため、不要な機能の無効化が必須になります。
肝心のプレイヤーソフトウェアはウォークマンアプリ。xperiaにインストールされているものとほぼ同じですが、ハイレゾ再生が出来るなど多少違いがあります。
Androidでストアも使えるので別のプレイヤーも使えます。Powerampなど。

音質など
音は普及型のAシリーズやFシリーズに比べて格段に違います。音の広がり、高音の伸び、低音の安定感などお店の店頭で聞いても分かるレベルで違いを感じられます。(この値段で同じだったら詐欺ですがw)他のwalkmanとの違いはあまり意味がないので、他社のDAPと比べてどうか?というと一長一短です。
良くも悪くもS-Masterで”デジタルアンプ”の音になってしまうので好き嫌いが分かれます。一般にデジタルアンプの傾向は
・高音の伸びが良い
・音の立ち上がりがいいのでクリアに聞こえる
傾向にあります。またデジタルアンプという仕組み上、スイッチングノイズのせいで測定上の歪み率はかなり悪くでますが聴感上の音には大きく影響しません。(測定情報だけで音質決めつけちゃイケナイ)
ZX1も同じ様な傾向です。アナログアンプ特有のクロスオーバー歪みがないので全体的にハキハキしていてとてもクリア。よく使われるPCM1794あたりのDACの音に比べると明るく元気に聞こえます。
反面、音の深味というか沈み込みについてはあまり得意ではないように感じます。低音は張りがあるのですが重くない、といった感じです。音全体はバランスよく纏まっていて聞きやすいですが、この傾向のせいか迫力に若干欠ける気がします。
またZX1は少しボーカルの艶というか響き?が控えめに感じます。これがSonyのチューニングなんでしょうか?
総じて音質的には「明るく元気な高音と張りのあるダイナミックな低音、でもヘビーじゃない」のイメージを受けました。ピアノとかすごく良く響くので聞くと楽しくなりますw

気になる点
いいものはどうしても欠点が気になります。
ZX1で気になるのがバッテリーの問題です。
前述したとおり、内蔵ソフトの機能を停止しないと電池消費が激しく待機状態で下手すると1日持たない場合があります。 またDSEE使うと電池消費が通常の倍くらいになるため余計に気を使います。
USB-DAC繋いだ場合は更に電池消費が激しくなります。USB-DAC繋いだ状態だと5時間持たない気がします・・・せっかくS-Masterで省電力なのに他で電力使って電池無くなっては勿体ないです。
あと無音時の「ノイズ」が大変気になります。
感度のいいイヤホンじゃないと聞こえませんが、聞こえてしまうと非常に気になります。
ずっと「サー」というノイズが気になります。このせいで”静寂に包まれた中の繊細な音”が表現できません(言い切ります!)
これ昔からS-Master積んでる機種は残ってるんですよね。Sony曰く「デジタルアンプなのでこれが限界」らしいのですが・・・
あとライン出力のレベルが非常に低いのも気になる点です。一般的なライン出力の半分くらいしか無いんじゃないですかね。またこのライン出力にもノイズが残っているので、ノイズが気になる場合はUSB-DACを繋ぐしかありません(PHA-3みたいな)

総評
デザイン含めた全体的なまとまりや、使い勝手はとてもいいと思います。
反面、バッテリーとソフトウェアの組み込みに関してはもう少し考えて欲しかったところです。
音は好みもあるので善し悪しは主観によりますが、ハイエンドとしては上々でしょう。
大きさと重さという点では持ち運びしやすく、中古市場でも潤沢に出回ってるので比較的値段も下がってきていますのでハイレゾ再生機としてはオススメしやすい機種です。


まぁ欠点が見えてくるとガマン出来なくなっちゃうのがオーディオの困ったところですが・・・(;´Д`)
なので手元にはZX1もうありませんw

次回に続く?

イヤホン紹介(5) K3003 その3

装着に難ありのK3003ですが、このままだと通常使用に支障があります。
eイヤホンでもケーブル角度を付ける事が出来なかったので調整をお願いするわけにもいきません。
結局のところ、ケーブルをイヤホンから下に出すと、どうしてもMMCXコンタクト分重みがかかるため振動で抜けやすくなります。
やはり抜けにくく安定する構造は耳掛けにして、MMCXジャックを本体の極近傍に用意するしか無さそうです。となると問題はMMCXジャックの固定です。

そこで、以前EX1000でプラグ変換アダプタをアクリルモールドで作っていただいたE4UAさんにご相談し、無理を承知で改造を依頼しました。
(高額イヤホンであることと、一度他で改造しているものなので何かあった時に対応しかねます、との事だったのですが失敗しても責任は問いません、全てこちらの依頼責任でお願いできませんかとの事で了承頂きました)
E4UAさんと何度か意見を交わし耳掛け方式でMMCXジャックを取り付けるため、shureの様な本体と一体化したような構造をアクリル形成で作って頂く事にしました。ケーブルを支えているゴム部分を完全に削り落としMMCXジャックを本体上に固定します。

早速ですが完成品です。K3003改二!

 
素晴らしい出来です。
ここまでしっかりした物に仕上げて頂けると思ってませんでした。まるで元々この形であったかのような一体感です。MMCXの角度はshureを参考に調整頂いたとのこと。黒いモールドはアクリル樹脂の形成で人体に触れても影響がないよう配慮されています。

早速装着してみます。ケーブルの角度もばっちりです。動いてもイヤホンが外れるような事はまったくありません。やはり耳掛け方式で正解です。耳掛けにしたおかげでケーブルのタッチノイズも全然出ません。
イヤーフックのついているケーブルもこれで無理せず使える様になりました。E4UAさんに心より感謝です。

実際のケーブルが付くとこんなかんじになります。


とてもいいです。知ってる人がみてもK3003には見えません(笑)
Kimberもこんな感じで普通に使えます。


 まあこれでもKimberは持ち歩きしんどいんですがw

三度の改修を経てK3003のMMCX化(デタッチャブル化)は完了しました。
ちなみにこのK3003をeイヤホンのご担当者さんにお見せしたところ「当店でもモールド形成にチャレンジしてみます」との事でしたのでeイヤホンでもまた別の形成で依頼できるかもしれません。
(モールド形成が出来ればオリジナルの下出しも角度付けて出来るので現実的かも)

あと今回の改造はeイヤホンで出来なかったのでE4UAさんにお願いした、ではありません。
こちらが理想とする形が中々決まらず試行錯誤にお付き合い頂いた過程でE4UAさんにお願いしました。
eイヤホンの対応は親身で無理も大分聞いて頂きました。誤解無きようお願いします。


で、結局改造してどうだったか?

費用はかなり(何度もやり直したので)掛かりましたが、最高です!
もういろんな所に上々ねと褒めて上げたい、そんな気分です。

10万超えのイヤホンの改造なんて酔狂な事はオススメは出来ませんが、頑張った甲斐はありました。
whiplash+K3003なんて贅沢は中々できませんw

イヤホン紹介(5) K3003 その2

K3003ですが使い込むとそれなりに不満(と期待)が出てきます。
ケーブルを交換出来ないのでリケーブルによるチューニングを楽しめないことや、音はいいけど音場の狭さや低音の豊かさなどが曲によって物足りなく感じる、などです。
残念ながらK3003はチューニングの余地がノズルフィルタの交換くらいしかありません。このフィルタの交換は効果が大きすぎて調整にはちょっとキビシイ。

EX1000の件もありケーブル交換はかなり効果を期待できます。
かなり悩みましたがK3003をMMCX化する改造を行う事にしました。
MMCXにすればケーブル変え放題ですので、気になっているK3003のケーブルチューニングもやり放題です。
どうにもこの細いケーブルが気になってシカタナイ!
(思えばこれが泥沼への第一歩でした・・・orz )

さて問題はK3003のMMCX化をどういった方針で改造するか?
shure掛け出来ないと使えないケーブルもあることから耳掛けがベストです。
ただK3003は根本がゴム形成で下に向かってケーブルが垂れています。
これを回して耳掛けはちょっと無理があります。あまりに大胆な改造で失敗すると目も当てられません。
それに耳掛けだとK3003の簡単装着が損なわれます
というわけで下出しの方向でMMCXでジョイントする改造にします。

改造をどうするか?自分でやっちゃう?サービスに頼む?
MMCXコネクタはかなり小さく細工には熟練した半田工作技術が必要です。
個人的に半田工作の技術は自信ありますが、MMCXコネクタの固定方法がいい方法が思いつきません。
ケーブル先端にぶら下げてジョイントは断線の危険性があるので駄目です。

いろいろ悩んだ結果、イヤホンのカスタマイズをeイヤホンで請け負って貰えるとのことだったので、思い切って頼んでみることにしました。
店頭で装着具合を相談しながら・・・出来た物がコレ


ジョイントプラグは長めで、内部に金属パイプが入っておりしっかりと固定されています。
元々付いていたケーブルもMMCXプラグを付けてジョイント出来るようにしてあります。

使った感じですが残念ながらあまりいいものではありませんでした。
まず長いプラグ部分が耳にあたり肝心のイヤホンそのものが耳奥まで挿しにくい。入らなくもないけど、その状態で外で歩き回ると振動でイヤホン自体が抜けやすくなってしまいます。
MMCXにすることでケーブルは変えられますが、イヤーハンガー付いてるものは使えません。これは元々分かっていた事ですが、いざ交換となるとかなり困りました。

オリジナルのケーブルを繋いで視聴したところ、妙に音が悪くなっています。(感じ、ではなくあきらかに音が悪くなった)イヤホン自身が耳奥まで入りにくいせいもあると思いますが、これでは改造したメリットがまったくありません。
またケーブルについても加工時に失敗があったようで、Y分岐が一部被覆が溶けて破損していました。装着問題もあることから、再度eイヤホンで調整改造を行って貰う事にしました。

・ ・ ・

eイヤホンにMMCXのジョイント角度の変更と改造部分が重いので軽量化、ケーブルの修理をお願いしました。出来た物がコレ



K3003改です(笑)
あんまり変わって無さそうで変わってます。肝心の角度は試してみたが固定が厳しくできないとの事でした。
ケーブルは修復されましたが少し短くなってしまい、結果的に使えなくなりました(泣)

ひとまず気を取り直してリケーブルです。


うーん・・・耳掛け出来なくもないんですが、かなり不格好です。
ちなみに写真のケーブルはkimber kableの改造品です。

音は最初に改造した物とくらべ問題なくなりました。前は何処か改造ミスがあったのかもしれません。

装着感はともかく、リケーブルの効果はありました。
標準ケーブルからいくつかリケーブルしてみました(プレイヤーはNW-ZX2です)

■Kimber Kabke
SonyがMDR-Z7用として販売しているKmber製のケーブルをMMCXに改造したものです。
オリジナルに比べあきらかに音場が広くなりました。低音も弾むような感じになります。
ただ上の写真みてのとおり、ケーブルが太く取り回しがよくありません。

■ALO Copper22
ALOの高級純銅ケーブルです。あまりレビューは見当たりませんが「凄い」ケーブルです。
元々K3003はバランス良い音が特徴ですが、Copper22に変えると全体的に音が明るくメリハリ強くなったように感じます。まるでイコライザーで高音低音補正したような感じを受けますが、ドンシャリではなく元気な音になるような感じです。
少し取り回しが良くないのが欠点です(ケーブルのソリが結構硬い)

■Whiplash Audio TWag V3 and TWcu V3
リケーブルの最高峰といえばWhiplashです。これは銀線と銅線のハイブリッドです。
Copper22と甲乙付けがたいのですが、Copper22ほど元気な感じはしませんが音場が広くなり低音も厚みが出ます。 音が濃くなる様な感じでK3003の上品さに深味が加わったような感じです。とてもいいです。

■AUDIOTRAK Re:Cable SR3
自作用にキットもでている銀線のケーブルです。
オリジナルと比べ明るくなった印象を受けます。本ケーブルはキンキンすると評価受けやすいですがK3003ではそんな事は無く銀線らしい高音の響きが魅力的なケーブルです。

■onso MMCXリケーブル 1.2m
この中では最も安価なケーブルです。ケーブル自体細くしなやかで取り回しは良好です。
音はニュートラル。オリジナルと比べてあまり違いは感じません。
ある意味K3003のケーブルはこれと同じくらい、ともいえるのでは無いでしょうか。

値段相応、といった所ですが一番いいのはwhiplashです。
時点でCopper22でしょうか。どちらも非常に高額なケーブルですが価値はあります。
改造自体は難アリですがリケーブルの効果は確実にあります。


その3に続きます。